ありえない

4月1日、辞令交付式に向かう。会場に入ると、座席表があり、自分の席に行ったら、配属先と自分の名前が書かれた名札があった。自分の住んでいる地区の公民館の名前が書かれてあった。ええ、ほお、なんと、そうなんや、と意味不明の笑みが顔に浮かぶ。本庁の、自分の希望の部署には行けないのね、と思ったが、それなら、お近くの公民館でもいいじゃないか、など、頭の中で思考がグルグル回っている。

市長の訓示、雇用保険や健康保険などの説明などがあり、公民館勤務の人が集められ、管轄の課の課長さんからお話があった。そして、そのまま、自分の勤務先に直行である。

行った先に待っていた人は、館長さん、主事、前任の事務の人であった。館長さんの顔がなぜか暗い。
基本、公民館は、館長さん、主事、事務員の3人でなりたっている。館長さんは、いわば名誉職で、本庁を退職した人とか、校長先生が退職してなったりする。
主事は、公民館の実務を担う人で、公民館活動の要(かなめ)である。
そして事務員は、公民館でとれる証明書(住民票、印鑑証明など)の申請の手続きをしたり、その手数料を農協に持っていったり、本庁に会計の報告をしたり、図書室があるのでその管理をしたり、貸し出し業務をしたり、あとは公民館の掃除や、自主グループの使う部屋の鍵の管理や予定表を作ったり、それから地区の行事の準備をしたり、やることが山ほどあるようだ。

館長さんの顔が暗かった原因は、主事にあった。今回、主事と事務が同時に変わったのだ。事務は臨時職員が2年ごとに変わるのだが、主事は前年度までいたベテランの男の人が他の公民館に移動になり、今回来た主事というのが、公民館、市役所の仕事を一切したことのない、民間出身の52歳の男の人が来たのである。しかも、なんと、PCを使ったことがない、という人だったのである。「PC、使えないの!?全然!?」と館長が何度も聞いている。前任の事務の女の人も、ええ〜〜!?とあきれている。

主事はPCの前に座って、公民館便りや地区住民運動会のプログラムをつくったり、老人会や消防や婦人会や地区の行事のお知らせなどを作ったりするのが仕事である。本庁にもPCでメールに資料を添付して送ることも日常の業務らしい。それなのに、PC使えない人が民間から来てどうするんだ。
しかも、前職がデパートの外商をしていたということで、そつなくお客様に良いものを買っていただく、という雰囲気を漂わせていて、公民館の行事の舞台を率先して設定して汗まみれになって働く、という感じは一切無い感じの人である。なんだか、訳わからず、キョトン、として机の前に座っている。あなたが動かないといけないのよ、という事がわかっているのか、いないのか。

それに、主事が公民館の行事をわかっていて、新人の事務の仕事もフォローしてくれるのが普通らしい。なのに一体この体制はなんなんでしょうか。書いていて、クラクラしてきた。

それからは、前任の事務の女の人が引き継ぎ事項を怒涛の勢いで教えてくれて、頭の中がホワイトアウトした。でも、これを覚えないと、月曜からは、だれにも聞けないのである。

主事が自分の書類の手続きで本庁に行ったとき、館長が「人事は何を考えているんだ」と、本庁に電話をし、「PCが全然使えんやつが来たけど、どうするんや、これ??」と言っていた。その後は、ため息ばかりついていた。
主事が帰ってきたとき、館長さんが、「文章も打ったことないの?」と改めて聞いていたが、「うちにはPCはあるけど、ワードは入ってないみたいなんですよ〜」といい(そんなPCあるものか)、「私、PC習ったほうがいいですかね??」と聞いていた。館長は「PC初心者入門」という本を渡し、「ローマ字打ちで文字打てるようになっといて」と言って、一日が終わった。

暗雲たちこめる1日であった。これから、どうなるんでしょう。館長さん、本庁人事課に強く抗議して、人、変えてもらってよー、と声を大にして言いたいが、そんなことしても決まったものは変えられないんでしょうな。どうなるどうなるどうなるどうなる。月曜がこわい。