不思議

多動のある子は、ものすごい行動力がある。すぐこけるのに、走って逃げるし、筋力が弱いのに高い所へ登って飛び降りる。
不快だと感じたら、加減のない力で人にパンチし、ギューッとつねってくる。ものを確かめるために、なんであろうと口にいれるし、不審なものには、つばをかける。
イライラしたら、自分の髪をひっぱって抜く。両手で髪をひっぱって、指に10本くらいの束が絡みついているのをみると、「痛くないの!?」と見ている方がつらくなるくらいだけど、本人はいたって平気な顔をしている。

先日、私が抱っこして歩くと、抱っこされたまま顔を下に向けて、熱心に何かを見ていて、なんだろう、と思っていると、つばをぺっぺと吐くので、「どうしたの?」と声がけをして、私も歩きながら下を見てみると、私のスリッパを履いた足が規則正しく動いているのがみえるだけである。
この、動くものはなんだろう、と不審に思って、つばをかけているのか、と推察するしかない。
この子には、この世界がどんなに見えているのだろう。どんなに感じているのだろう。私ががんばって考えても、理解が及ばない不思議な世界がこの子の中にはあるようだ。