秋の一日

今週初め、関東から中学の同級生が2人帰省していた。
3日の祝日に、都合がつく同級生グループで山に紅葉狩りに行った。

愛媛県新居浜市東平(とうなる)地区という、住友別子銅山がかつて栄えていたとき、銅の採掘のために、山深いところに大きな町があり(明治から、昭和40年代)、今はその産業遺跡が残っているところである。
社宅(長屋)跡、病院、小中学校、お店、劇場(全部、建物はなく、土台の石組みが残っている)、そして鉱石を運ぶための鉄道跡、レンガ造りの変電所の建物、トンネルなど、今は広大な山々に囲まれた中に、その廃墟が残されており、人間の作った営みなど、いつかは自然の中に還っていくんだ、と紅葉した山に吸い込まれていってしまいそうな圧巻な場所であった。

観光者向けの設備も整っており、資料館では東平地区の歴史がわかるビデオも流されていた。当時の人々が生き生きと暮らす様子がわかり、なおいっそう、今との対比に心が浮遊するようだった。

紅葉狩りから帰って、数時間経ったとき、帰省組の一人から、
「親に今日のことを話したら、東平には、あなたが生まれる前、小学校の教員として家族で赴任していた、と聞かされた。事前にこのことを知っていたら、もっと違った目で見れたかもしれんのに。いやはや、びっくり。」というラインメールが来た。
その子のお母さんは、小学校の先生をしていて、私も教えてもらった事がある。もう80代の方である。今まで、昔のことを話す機会がなかったらしい。
その子のお姉さんが赤ちゃんだった時に、東平に一家で住んでいたそうだ。ビデオの中に、もしかしたら、お母さんがいたかもしれないね、などとラインで話をし、紅葉狩りに行った全員が、「きょうは、場所に呼ばれて行ったんやね」と意見が一致したのであった。