「悪貨」

島田雅彦「悪貨」講談社 を読んだ。偽札判定機をもすり抜ける超精巧な偽札が大量に刷られ、日本社会に出回り、日本はインフレに陥り、外国資本に日本がじわじわと買われていくのである。その裏には中国の闇の組織があった・・。こわー。偽札が出回ると、国が滅びる、というが、こういうことか。

偽札づくりと、それを阻止する技術は日進月歩だそうだ。そこまでしてなぜ偽札をつくるのかは偽札作りじゃないとわからんが、偽札判定機で「本物」と出たものは、もう本物じゃないか、と思う。が、それを使ったら犯罪なんですよね。

新年早々、松山市では偽札が出回った。恐れ多くも神社のお守り売り場でそれが使われ、付近のお土産屋さんでも使われた。容疑者の男が捕まったが、その偽札は本物より一回り小さく、印刷も雑だったそうだ。人ごみに紛れて使ったようだ。そんなものを作って、使って、捕まって、一生を棒にふって、残念なことである。どのような経緯でそうしようか、と思うのか、聞いて見たい気もするが、きっと理解できないだろう。

「悪貨」では、闇の国際組織を利用しようとした日本人と、それを摘発にきた女刑事との恋愛や、偽札とは知らずに援助を受けた理想社会をめざす共同体の苦悩が描かれ、最後まで飽きることなく読んだ。闇組織を利用し、その中で活躍したが、最後には裏切った日本人の若者は、錨をつけられて海に沈められた。それが当然と思うくらいの覚悟がなければ、贋金など作っちゃイカンのである。