おドレス

11日の演奏会で着た衣装をクリーニングに出しに行った。
衣装、すなわち、ロングドレスである。

私がいつも利用しているのは、近所の大型スーパーの1階にあるクリーニング店だが、初めてコーラスのドレスを持っていったときにはドラマがあった。

「すみません、これ、お願いします。」とおずおずと服を差し出す私の手元に店員さんが釘づけになり、何かを聞きたそうにソワソワするので、
「これ、お母さんコーラスの大会で着た服なんです。」と問われもしないのに説明し、
「ああ、そうなんですか。わかりました〜。」となぜか安心したように言われ、何かに間違われかけたのでは、とよくわからないまま、大汗をかいて店を後にしたのだった。

息子が小学生のころ、演奏会が近いのでドレスをクローゼットから出し、部屋に吊っておいたところ、遊びにきた息子の友達が、「この部屋、誰の!?」と叫んだのを覚えている。
服、ではなく、部屋、というのもおもしろいが、その子がドレスを見てどれだけ混乱したのかがよく解るような気がする。日常、フツウのお母さんが着る服ではない。

ドレス、という言葉も口にする時、非日常を帯びてなじまないので、私の仲間内では、「おドレス」と言っている。
おドレスの中でも、デザインがネグリジェっぽいものは、「おネグり」、後は、色で、「赤」とか、「クリーム」とか言う。
土人色」という最悪のものは、結局1回しか着ていない。お金がもったいないことである。違うものを買えばよかったのに。

まあ、この「おドレス」のおかげで、太ることができない。
既成の服をカタログで選ぶこともあるが、市内の洋裁の先生にお願いするときもある。
そのときは、結構ジャストサイズに仕上げてもらうので、1cmの横幅の増加が次に着る時には命取りになる。かなり、恐ろしいことである。
今回のおドレスは、胸の下で切り替えがあって、食事をして胃が膨らんだ状態ではとても苦しかった。
いつもは、腰骨の上の「どえんどえん」とした腹肉が問題であるが、ボディスーツでカバーし、なんとか難を逃れている。


さて、昨日クリーニングに持っていったドレスだが、店員さんは、私の紙袋から取り出したものを見ても眉ひとつ動かさず、さっさと伝票を打ち出し、出来上がり日を書き込み、渡してくれたのであった。
長い付き合い、とはこういうもの。私のおドレスも、地元で市民権を得たような気分になって、実に感慨深かった。