5月5日 ②

バス停前の道を渡り、三千院へ向かう小道を登っていく。あたりの緑がとても綺麗で、山里へ来たなあ、という感でいっぱい。空気がとても気持ちがいい。
参道には、お店がずらりと並んでいて、道に出された木の長椅子に腰掛ける、大原女の格好をした観光客の女の人の姿もあった。

三千院境内に入り、立木と苔の素晴らしいお庭を見たり、国宝の阿弥陀三尊像が祀られている往生極楽院を参拝したりした。このお堂に入ったとき、お坊さんが参拝客に、船底型天井のことや、そこに描かれていたであろう極楽浄土の絵のことや、阿弥陀如来像のことを説明してくれていた。語り口がとても流暢かつユーモラスで、さすがお坊さん、と感心。最後に、お盆前後にあるロウソクでのお寺のライトアップのための寄付をお願いされ、プロやん、との感想を持つ。

次に、勝林院の前を通り、宝泉院へ。樹齢700年の大きな五葉松が迎えてくれる。
書院の中からは、柱と柱の空間を額縁に見立ててお庭を見る「額縁庭園」か鑑賞できる。その庭に面した廊下には、赤い敷物が敷いてあり、そこでお茶とお菓子を頂ける。そこで、写真を撮ったり庭を見たりしてくつろいでいると、お坊さんが説明に出てきてくれた。
そして言うことには、「今皆さんが、お茶を飲んではった所の上の天井には、伏見城で豊臣と戦って負けた徳川の武将の亡骸が何日も放置されて付いた血の跡やら骸骨の顔の跡やらが残っているんです。」と、棒を持ってきて、こことか、あそことか、と説明される。
「何日も放置されておったんやから、血だけではないんですよ。ありとあらゆるものが出て。」と言いながら、「ここが一番はっきり跡がついてますな」と指した所は、私らがお茶を頂いたところの真上だった。
「こういうところで皆さん、お茶を飲んではったんです。大丈夫でしたかな」と言われて、えー、じゃあ、敷物敷かないでよ〜悪趣味〜〜、と思ったのは私だけではないと思うの。

そして、私らが帰るとき、入れ替わりにツアーの人達が入ってきて、コンダクターの男の人が、血天井の説明を始めたとたん、さっきのお坊さんが飛んできて、その話を取ってしまい、コンダクターさんは、所在なさげに自分の棒をしまって、悲しそうにしていたように遠目に見えたので、娘とつい笑ってしまった。大原のお坊さんは、よう喋らはる人が多いなあ。おもしろい。