神 降臨

神、と呼ばれる人がいる。税務署職員の話であるが。

知識が豊富で、お客さんに優しく、私ら派遣職員にも態度が変わらず、物腰が柔らかい人。外見は、おっとりしておとなしそうに見える。

「神率」という言葉が密かに流行っている。仕事中に、手を挙げて職員さんの助けを呼ぶとき、または、入力が全部終わって、確認をしてもらうとき、その人が来てくれた回数が多かったら、「今日は神率が高くて、うれしい」と言う。

その人は、早くから「神」と言われていたが、今日、もう一人、神に認定された人がいる。
その人は、ちょっと丸っこい、60前くらいの人だが、その人も、態度が変わらず、お客さんが聞いたことには、とても親切に答えてくれている。

お昼休み、私たちがいる部屋に、その2人が偶然一緒に入ってきて、お弁当を食べ始めた。「神」について話していた私たちは、うふふ、と笑って、「神たちの対話」だの、「なごむ」とか言って、その場はとてもいい雰囲気になった。


神の対極にいるのが、若い3人衆である。全然笑わず、お客さんに対しても、えらく横柄な口をきき、とても早口である。お客さんの質問にも、「そんなことは、入力してみないとわからない」とか言って、ごまかす。

他には、偉くて近寄りがたい統括官や、ぽんぽんモノを言う頼りにはなるのだけど、神になるには素質が何か欠けている惜しい人や、年配の、現場ではちょっと影の薄い人などがいる。

そして、もう一人、私にとって「神」な人がいる。お客さんに対しても、とても礼儀正しく、まなざしがまっすぐな(笑)人である。
その人は、あまり注目されていなかったが、私にとっては「神」な出来事があって、それ以来、心の「神」として、密かにあがめている。

今日の午前中は、若い衆のうちの一人がずっと近くにいて、うーん、な感じだったけど、昼からは、「心の神」率が大変高く、ずーっと立ちっぱなしのPC打ち込みっぱなしの過酷な労働の中、「神」が見守ってくださる、と思うと頑張れたのであった。