コンタクト騒動

その日は朝からなんか変だった。

コンタクトを入れても視界がぼけるのである。でも、遠くはちゃんと見えるし、車の運転も別に支障もないし、んん?なんだろう、この感覚は、と思いつつ職場に着いた。
そして、PCのスイッチを入れて、がくぜんとした。
画面が見えん。昨日は見えていたPCの文字がかすんでいる。なんじゃこりゃ。
狼狽しながら事務所から玄関ホールのほうへ目を移すと、パンフレットホルダーに入っている数々のパンフのみだしの文字がくっきりと見える。
事務所に目をもどすと、壁にはってある、細かな文字が印刷されている紙の文字、数字などがはっきり見える。しかし、机の上のPCの文字はぼけて見えるのである。

昨日はこんなことはなかったのに・・、と首をひねり、これって一晩のうちに、老眼がめっちゃ進んだんじゃないのかね??との結論に達した。でも、こんなことがあるんだろうか???

とりあえず、引き出しから、過去に100均で買ってあった、一番かるい度の老眼鏡をだして、かけてみた。すると、なんとか字が見えるのである。
昨日までは、そんなもんかけなくても、ちゃんとPCの字は読めていた。
ほんまに一晩で老眼がすすんだんだろうか??

でも、その眼鏡をかけていないと、手元の作業が全然できない。
しかたなく、一日中、その100均老眼鏡をかけて仕事をし、「明日は午前中休みをもらって、眼科に行こう」とか、「こんなに急激に目が変になるなんて、脳に腫瘍でもできて、視神経に支障をきたしているんではないか」とか、しまいには「こんな目になってしまって、私の人生これからどうなるんだろうか」と人生を悲観して落ち込んでしまった。

仕事が終わり、家に帰って、すぐにコンタクトをはずし、家メガネに変えた。家メガネは、読書やPC用に、0・6くらいが見えるように作ってある。
メガネをかけたとたん、近くがフツウに見えた。新聞も、冷蔵庫に貼ってあるレシピも、ちゃんと読める。よし、明日からは、このメガネで仕事に行こう、しかたないじゃん、こんなことになってしまったんだから、と私は思った。そして、次の瞬間、思い当たった。
ん?目、きのうと同じじゃん。目自体が変になったのなら、家メガネをかけても、なんらかの見え方の変化があるはず。でも、それは全くない。

もしかして・・。コンタクトの入れ間違い??
私はめっちゃド近眼で、長年コンタクトを愛用している。でも、最近は、近くを見やすいように、コンタクトの度を落としている。効き目が右で、左目は飛蚊症がひどくて視力が出ないので、クリアに見える右を弱い度にして、左目は、視力を最大に出すために、強い度のを入れている。
その日は、間違って、左右逆にいれてしまい、右の視力が2・0くらいになり、さすがに50路の目が、ピントがあわずに近くが見えなかったのではないか。ほとんど、効き目の右で視力を得ているので、こんな状況に陥ってしまったのでは。

次の日、コンタクトケースのレンズを注意深く、左右逆に装着してみた。
普通に近くが見えた。鏡にうつった自分の顔も、細かいとこまではっきり見えた。やっぱり〜〜。
昨日一日、ほんまに大変だった。よかった。眼科に行かんでもよくなった。しっかし、あほや〜〜。まったくぅ〜〜〜。
安堵の気持ちと、目の悪い人って、ほんまに大変やわー、との悲しい気持ちになったけど、まあ、よかったわい、病気じゃなくて〜〜、と気持ちをきりかえて、仕事場へと向かったのであった。